🧩「エネルギーのキャッチボール」
~位置エネルギー・運動エネルギー・力学的エネルギー~
👦ゆうと:「あかり、ブランコってさ、上の方で一瞬止まって、下に来ると速くなるよね。あれってなんで?」
👧あかり:「いいところに気づいたね!それは“エネルギーのキャッチボール”が起きてるからだよ。
今日は“力学的エネルギー保存の法則”を、ブランコ・ボール・台車の例でやさしく見ていこう!」
💡このあと出てくる言葉の略し方
理科では、よく出てくる「エネルギー」を次のように省略して書きます。
このブログでも同じ表記を使うよ!
| エネルギーの種類 | 意味 | このブログでの書き方 |
|---|---|---|
| 位置エネルギー | 高さによって変わるエネルギー | 位置E |
| 運動エネルギー | 速さによって変わるエネルギー | 運動E |
| 力学的エネルギー | 位置E+運動E(合計エネルギー) | 力学的E |
👧あかり:「“E”は英語の“Energy(エネルギー)”の頭文字だよ。
この3つの“E”のキャッチボールが今日の主役なんだ!」
① ブランコの中で起きていること(位置E⇄運動E)
👧あかり:「ブランコがいちばん高い位置では一瞬止まる=速さ0。だから運動E=0、かわりに位置Eが最大だよ。」
👦ゆうと:「位置Eって“高さ”が関係するやつだっけ?」
👧あかり:「その通り!位置E=力(N)×高さ(m)で考えるよ。」
例)重さ40Nの物を3m持ち上げると
位置E=40×3=120J(ジュール)
👧あかり:「ここから下に動くと、位置Eが減って運動Eが増える。これが“キャッチボール”の正体!」
② 「速さ²」に注目!運動Eがぐんと増えるわけ
👧あかり:「運動Eは½×質量(kg)×速さ²。だから速さが2倍だと4倍、3倍だと9倍!」
👦ゆうと:「なんで“2乗”? 2倍じゃなくて?」
👧あかり:「飛んでくるボールを止めるイメージで考えよう。
止めるには“力”をかけて、手元で少し“距離”も動くよね。エネルギー=力×距離。
ボールが2倍速いと、止める力もだいたい2倍、止める距離もだいたい2倍になって、2倍×2倍=4倍になる。
だから“速さ²”に比例するんだ。」
③ 力学的エネルギーって何?
👦ゆうと:「“位置E”とか“運動E”とか、いろいろ出てきたけど、結局どうつながってるの?」
👧あかり:「いい質問! 実はこの2つを足したものを『力学的エネルギー(力学的E)』って呼ぶんだよ。」
👦ゆうと:「つまり、位置E+運動Eが“力学的E”ってこと?」
👧あかり:「そう! しかもこの合計は、摩擦などがなければいつも一定(変わらない)んだ。
上にいるときは位置Eが多くて運動Eが少ない、下に来ると運動Eが増えて位置Eが減る。
でも、全体(力学的E)の合計はずっと同じなんだよ。」
📘式で書くと
力学的E=位置E+運動E(※摩擦・空気抵抗がないとき)
→ 力学的Eは常に一定(=保存される)
👧あかり:「これを**『力学的エネルギー保存の法則』**っていうんだ。
“位置E”と“運動E”がキャッチボールしても、ボールの合計は変わらない、そんなイメージだね。」
④ ジェットコースター・ボール・シーソーでも同じ!
👧あかり:「ブランコ以外にも、“エネルギーのキャッチボール”は身近なところでたくさん起きてるよ。たとえば――」
🎢ジェットコースター:上で位置E最大→下で運動E最大。合計(力学的E)は一定。
⚾ボール投げ上げ:上昇で位置E↑運動E↓、頂点で運動E=0、下降で運動E↑位置E↓。
⚖シーソー:上がる側は位置E↑、下がる側は位置E↓。動きの途中で運動Eが入れ替わる。
👦ゆうと:「いろんな場面で位置E⇄運動Eのキャッチボールが起きてるんだね!」
⑤ 見えないエネルギーを実感しよう(台車で運動Eを調べる)
👧あかり:「ここまでで、“速さ”や“高さ”によってエネルギーが入れ替わることがわかったね。
“止めにくさ”=エネルギーの大きさ と考えると、次の2つが鍵になるよ。」
👧あかり:「たとえば、軽い台車と重い台車を走らせたら、どっちが止めるのが大変だと思う?」
👦ゆうと:「うーん、重いほう!止まるまでに時間かかりそう。」
👧あかり:「そう!つまり運動Eは台車の質量に比例しているんだ。」
👧あかり:「じゃあ次。今度は同じ重さの台車で、ゆっくり走る場合とすごく速く走る場合を比べたらどう?」
👦ゆうと:「速いほうが止めにくい!」
👧あかり:「その通り。速さが2倍になると、止める力も距離も2倍くらい必要になる。
つまり運動Eは速さの2乗に比例しているんだよ。」
👧あかり:「だから、スピードが上がると“止まりにくくなる”のはそのせい。
車や自転車も、速く走るほど止まる距離が長くなるのは、エネルギーのせいなんだね。」
⑥ 現実には摩擦がある(エネルギーの“移籍”)
👧あかり:「実際のブランコや台車は、摩擦や空気抵抗で一部が熱エネルギーに変わっていく。だから少しずつ止まる。
“エネルギーが消えた”のではなく、形が変わって周りに移っていくだけなんだ。」
★ 力学的エネルギー保存の法則の計算(保存の使い方)
力学的エネルギー保存の法則:
位置E+運動E=一定(摩擦がない時)
📘例題:「高さ5mから重さ40Nの物体を落とす。地面直前の速さvを求めよ(空気抵抗なし)。」
(保存) 位置E = 運動E
(代入) 40N×5m = (1/2)×(4kg)×v² ※40N=4kgに換算
(整理) 200 = 2×v² → v²=100
(答え) v=10 m/s
💡ポイント:「位置E」はN×mで考え、「運動E」ではNをkgに直して使うのがコツ。
🌟ギモンで深める!Q&A
- Q1:ブランコは上で止まり、下で速くなるのはなぜ?
-
→ 上では運動E=0・位置E最大。下へ行くほど位置E↓→運動E↑に変わるから。
- Q2:速さが2倍だと運動Eはなぜ4倍?
-
→ 止めるときの力も距離もおおよそ2倍必要 → 力×距離=4倍。
- Q3:動いていないのに位置Eが“ある”ってどういうこと?
-
→ 「落ちて動ける準備」が整っている貯金のようなもの。高い×重いほど大きい。
- Q4:エネルギーは保存なのに、なぜ現実では止まるの?
-
→ 摩擦・空気抵抗で一部が熱に。形が変わるだけで、消えていない。
- Q5:実際は、同じ高さまで登れないのはなぜ?
-
→ 登る途中摩擦でエネルギーを使ってしまうから。
🎓先生からのコーナー:ここだけは絶対おさえろ!テストで出るポイント
① 用語&変化の方向(記述で出る)
- 位置E:高いほど・重いほど大。
- 運動E:速いほど・重いほど大。
- 力学的E=位置E+運動E(合計は一定)。
- 記述例:「高さが下ると位置Eは減り、運動Eは増える。」
② 公式(暗記する)
- 位置E=力(N)×高さ(m)
- 運動E=½×質量(kg)×速さ²
- 単位:J(ジュール)
③ 速さ²の意味(文章記述で頻出)
- 速さ2倍→止める力も距離も概ね2倍→力×距離=4倍。
- 標語:「速さ²で効く」
④ 摩擦・空気抵抗(実験/思考問題)
- 摩擦があると熱に変わり、同じ高さまで戻れない。
🔻超重要事項3点
- 位置E=N×m, 運動E=½mv²
- 位置E+運動E=一定
- 速さ2倍→運動E4倍(理由=力×距離も約2倍×2倍)
💬先生のひとこと
「式を覚えるだけでなく、“エネルギーがどこから来て、どこへ行ったか”を一文で説明しよう。そこが点差になるよ!」
🔢力学的エネルギー保存法則を使う計算問題(ハイレベル)
問:「高さ5mの所から40N物体を落とすとき、地面に着く直前の速さを求めよ。(空気抵抗なし)」
考え方:
1️⃣ 力学的エネルギー保存法則より、一番上での位置E=一番下での運動E
2️⃣ 一番上での位置E=5m×40N=200J
一番下での運動E=½×4kg×v²=2×v²
200=2×v²
3️⃣ v²=100
4️⃣ v=10 m/s
💡ポイント:重さに関係なく、同じ高さなら同じ速さになる!
🌟確認テスト:エネルギーの法則を完全マスター!
【基本編・用語チェック】
Q1. 物体が高い位置にあるときにもっているエネルギーを何という?
答え: 位置エネルギー
解説: 高い位置にあるほど、重いほど大きなエネルギーをもっている
Q2. 物体が動いているときにもっているエネルギーを何という?
答え: 運動エネルギー
解説: 動くスピードが速いほど、また重いほど大きくなる。
Q3. 位置エネルギーと運動エネルギーの合計を何という?
答え: 力学的エネルギー
解説: 「力学的エネルギー=位置E+運動E」。常に合計が一定に保たれるのが法則!
Q4. 「エネルギーの合計は変わらない」という法則を何という?
答え: 力学的エネルギー保存の法則
解説: エネルギーは形を変えるだけで、なくなったり増えたりはしない
Q5. 速さが2倍になると運動エネルギーは何倍になる?
答え: 4倍
解説: 運動エネルギーは「速さの2乗」に比例する。2倍速いと4倍のエネルギーになる!
【基本編・計算問題】
Q6. 重さ20Nの物体を2mの高さまで持ち上げたときの位置エネルギーを求めなさい。
答え: 40J
解説: 位置E=力(N)×高さ(m)=20×2=40J。
Q7. 重さ30Nの物体が高さ5mの位置にあるときの位置エネルギーを求めなさい。
答え: 150J
解説: 位置E=30×5=150J。
Q8. 速さが3m/sのとき、質量2kgの物体の運動エネルギーはいくつ?
答え: 9J
解説: 運動E=½×2×3²=9J。
Q9. 高さを3倍にすると、位置エネルギーは何倍になる?
答え: 3倍
解説: 位置E=力×高さなので、高さが3倍なら位置Eも3倍になる。
Q10. 高さ5mのところから転がり落ちた球が、下の坂を登っていくとき、摩擦がなければどの高さまで登る?
答え: 5m
解説: エネルギー保存の法則により、位置E→運動E→位置Eと変わっても合計一定。摩擦がなければ同じ高さまで登る。
Q11. 速さ4m/sの小球(質量1kg)が、速さ8m/sのときと比べて運動エネルギーは何倍?
答え: 4倍
解説: 運動Eは速さの2乗に比例。8÷4=2倍 → 2²=4倍。
Q12. 物体が坂を下るとき、位置Eは減り、運動Eはどうなる?またその合計はどうなる?
答え: 運動Eは増え、合計は変わらない。
解説: エネルギーは形を変えるだけで、全体(力学的エネルギー)は一定。
【発展編・入試チャレンジ】
Q13 図1は、なめらかにつながった二つの斜面と、その上を転がる小さな鉄球を表しています。
さあ、鉄球と一緒にエネルギーの秘密を探検しましょう!
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1. まずは準備運動!斜面Ⅰの角度を15°に設定し、鉄球をA地点からそっと転がします。もしも摩擦が全くない夢のような斜面だったら、鉄球は斜面Ⅱのどこまで登りきるでしょうか? 図の①~③から予想してみてね!
- ①
A地点では、位置Eが最大で、運動Eは0でした。 だからA地点と同じ高さになると、位置Eが最大で、運動Eは0になります。鉄球はA地点と同じ高さ①まで登ります。
2. 鉄球が斜面Ⅱを登っていく時、そのスピードはどうなるだろう? よく観察してみると、だんだんゆっくりになっていくのがわかるね。それは一体なぜだろう? 鉄球にどんな力が働いているのか、考えてみよう
2. 鉄球には、重力が絶えず働いています。斜面上にあっても、鉄球を斜面下向きに引っ張っています。常に一定に力がはたらいているから、斜面を登る鉄球のスピードは、ブレーキをかけられるように、徐々に遅くなっていきます。
3. 鉄球がA地点から出発して、斜面Ⅰを下り、斜面Ⅱを登るまでの間、運動Eと位置Eはどのように変化するかな?
図2のグラフaとbから、それぞれの変化を表すグラフを選んでみよう。
- 運動E: a, 位置E: b
位置Eは、高い場所にあるほど大きくなるエネルギー。だから、鉄球が斜面を下ると、位置Eは減少していくんだ。一方、運動Eは速さが速いほど大きくなるエネルギー。斜面を下る鉄球は、スピードを上げていくので、運動Eは増加していくんだね。
4. 今度はスタート地点を変えてみよう! 鉄球をB地点から転がした場合、斜面Ⅱのどこまで登るかな? ①~③から選んでね。
- ①
1番の問題と同じように考えます。鉄球はB地点と同じ高さまでしか登れません。
5. A地点とB地点、鉄球の位置Eはどちらがおおきいですか?
- 同じ
位置Eは、高さが同じであれば、鉄球がどこにいても同じなんだ。
6. 鉄球がA地点からスタートした場合と、B地点からスタートした場合を比べてみよう。それぞれの力学的エネルギーはどう違うかな?
- 同じ
力学的エネルギーは、位置Eと運動Eの合計で決まる。A地点とB地点では、位置Eは等しくて、運動Eはどちらもゼロ。だから、A地点でも、B地点でも、力学的エネルギーは同じになるんだ。
7. さあ、いよいよ最後の挑戦! 実際の実験では、ここまで考えてきた理想的な結果と異なる結果になることが多いんだ。その理由を、エネルギーの視点から解き明かしてみよう!
7.
現実の世界は、摩擦や空気抵抗など、運動を邪魔するものがたくさんあります。鉄球が斜面を転がる時、これらの抵抗によって、力学的エネルギーの一部が熱エネルギーに変わってしまうんです。だから、現実の世界では、鉄球はA地点やB地点と同じ高さまで登ることができません。
Q14. 台車を使って釘を打ち込む実験に挑戦です!🎬
固定板の前に粘土を置き、そこに釘を少しだけ差し込んでおきます。準備ができたら、台車を走らせて釘にぶつけてみましょう! 釘が何cm深く打ち込まれるかで、目に見えなかった台車のエネルギーを見えるようにしました。
[実験1] 台車の重さを変えて、同じ高さからスタートする実験をしました。
[実験2] 同じ台車をスタートの位置を変えて実験しました。
台車の重さやスピードを変えると、釘の打ち込まれ方は変わるかな? 🤔
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1. 水平に移動している台車は、どんなエネルギーを持っていると言えるかな?
1. 運動エネルギー 💪
2. そのエネルギーは、台車の重さ(質量)とどんな関係があるだろう?
2. [実験1]の結果から、重い台車の方が、深く打ち込まれているので、台車の質量をエネルギーは比例している。
3. では、台車の速さとはどんな関係があるだろう?
3. 高い所からスタートした台車は速くなります。 [実験2]の結果から、速さが2倍になると、打ち込まれている深さは4倍になってので、運動エネルギーは、速さの2乗に比例します。
4. もし台車の重さを2倍して、速さを3倍になったら、そのエネルギーは何倍になるかな?
4. 質量に比例するので、まず運動エネルギーは2倍になります。さらに、速さの2乗に比例するから、速さが3倍になれば運動エネルギーは9倍になります。この両方が同時に起こるので、×2×9で18倍になります。
台車の質量と、運動エネルギーは比例します。
運動エネルギーは、台車の速さの2乗に比例します。
Q15. 高さ6mの所にある50Nの物体が落下して地面に着く直前の速さを求めなさい。
答え: 約11m/s
解説:
位置E=運動E
→ 50×6=½×5×v² (50N=5kg)
→ 300=2.5v²
→ v²=120
→ v≒10.95m/s。
🎬エンディング:見えないキャッチボールの先に
👦ゆうと:「なるほど……エネルギーって、見えないけどちゃんと動いてるんだね。」
👧あかり:「そう。ブランコの一番上で一瞬止ま“静けさ”の中にも、エネルギーは息づいてるんだよ。動き出す瞬間を待ってるみたいにね。」
ゆうとは少し考えこんだ。
「人の努力も、同じなのかもね。今は“止まってる”ように見えても、心の中には“エネルギーの貯金”があるんだと思う。
勉強して、考えて、少しずつ積み上げた力は、きっとどこかで動き出す。」
👧あかり:「うん。位置エネルギーをためて、運動エネルギーに変わるみたいに。
努力も、いつか動きに変わるんだよ。」
夕焼けの光の中、ゆっくりとブランコが揺れた。
風に乗って、笑い声が空へと伸びていく。
その瞬間――
「見えないエネルギー」が、確かにそこに生きている気がした。
👩🏫まとめメッセージ
「エネルギーは、形を変えても消えません。
それは“頑張り”も同じです。
今日積み上げた努力は、きっといつか、動き出す力になります。
自分を信じて、学びを続けよう。」

