「これ、かけるの? わるの?」
と毎回聞くなら、少し心配です。
速さの問題でこの聞き方がクセになっている子は、公式は覚えていても、数字どうしの関係を見ていないことがあります。
小学生の間は、それでもテストで○が取れることがあります。ところが中学生になると、方程式の文章題、比例・関数、理科の密度や濃度など、「何と何が、どんな関係になっているのか」を自分で考えなければならない問題が一気に増えてきます。
私は小学生から高校生まで教えていますが、中学生になっても、
「これ、かけるの?」
「わるの?」
と聞く子は珍しくありません。
その子たちを見ていると、計算ができないというより、数字どうしの関係を見る習慣が十分についていないことが多いのです。
では、小学生のうちに何をしておけばいいのでしょうか。
難しいことではありません。速さの公式をいったん脇に置いて、「時間」と「道のり」の対応表を書く。
今回は、パパ・ママが今日から家庭でできる、「かける?わる?」から卒業する速さの教え方をご紹介します。

まず確認。「50km」って速さでしょうか?
お子さんに、こんな質問をしてみてください。
「50kmって、速さ?」
意外と「速さ!」と答える子がいます。中学生でも、こう答えることがあります。
でも違います。
❌ 50km
→ どれだけ進んだかを表す「道のり」
⭕ 毎時50km
→ 1時間あたり50km進む「速さ」
何が加わったのでしょうか。
時間です。
速さというのは、「時間」と「道のり」を組み合わせて表す量なのです。
ここが分かっていないまま公式を覚えると、数字を見て「どれとどれをわるんだっけ?」となりやすくなります。
「毎時」から速さの単位です
ここはぜひ、パパ・ママにも知っておいてほしいところです。
小学校では、毎時50kmという表し方をします。子どもは「50km」の部分ばかりに目がいきがちですが、「毎時」も含めて速さを表しています。
毎時とは、1時間あたりという意味です。
毎時50km=1時間あたり50km
中学校では、これを km/時(キロメートル毎時) のように表すことが増えます。こちらを見ると、「km」と「時」が両方入っているので、速さには道のりと時間の2つが必要だということが見えやすくなります。
小学生のうちから、「kmだけを見ない。『毎時』から速さなんだよ」と教えておくと、その後の理解につながります。
家で30秒クイズ
「50kmは?」
→ 道のり
「毎時50kmは?」
→ 速さ
「何が加わった?」
→ 時間
ここまで言えれば、かなりいい理解です。

公式より「対応表」で考えてみよう
では、実際の問題です。
230kmを5時間で走った自動車の速さを求めなさい。
ここで、すぐに「230÷5だよ」とは教えません。まず、こう書きます。
| 時間 | 道のり |
|---|---|
| 5時間 | 230km |
| 1時間 | □km |
そして聞きます。
「5時間を1時間にするには?」
「5でわる」です。
では、「時間を5でわったなら、道のりは?」と続けます。
道のりも同じように5でわるので、
230÷5=46
答え:毎時46km
ここで大事なのは、「速さだからわる」と覚えることではありません。
5時間→1時間と5分の1になったから、道のりも5分の1にする。
この関係が見えたことです。
公式で「速さ=道のり÷時間」と処理したのと、計算は同じです。でも、考え方は違います。
自分で「わる」と判断できた。
ここを育てたいのです。

「かける?わる?」と聞かれたら、チャンスです
お子さんから「これ、かける?」「わる?」と聞かれると、つい答えを教えたくなります。
でも、ここはチャンスです。
すぐに答えず、まず、「時間はどう変わっている?」と聞いてみてください。
それでも分からなければ、「5時間を1時間にするには?」まで戻ります。
「5でわる」と答えたら、「じゃあ、道のりは?」と続ける。
パパ・ママがやるのは、答えを教えることではなく、考える場所まで戻してあげること。
それで十分です。

「1mってどのくらい?」と聞いてみてください
速さが苦手な原因は、公式だけではありません。
実は、長さや時間の感覚が、現実の生活と結びついていない子もいます。
たとえば「1mって、このくらい?」と聞くと、30cmくらいを示す子もいれば、2mくらいを示す子もいます。
もちろん、1m=100cmは知っています。テストなら答えられます。
でも、現実の1mがどれくらいかは分からない。
つまり、教科書の中の「1m」と、目の前にある「1m」が別物になっているのです。
速さは、時間の感覚と道のりの感覚を組み合わせる単元です。だから、この部分が弱いと速さもつかみにくくなります。
家の中が、そのまま算数教室になります
これは、ご家庭だからこそできる練習です。
特別な教材はいりません。まず、お子さんに予想させてみてください。
「10cmってどのくらい?」
予想したあとに、定規で確認します。
次に、「1mってどのくらい?」と聞いて、実際にメジャーで測ります。
さらに、「時計を見ないで、1分たったと思ったら教えて」とやってみる。
ゲーム感覚で十分です。
そして速さの問題で「1分で50m進みました」と出てきたら、すぐ計算する前に、「1分で50mって、どんな感じ?」と聞いてみます。
歩くくらい? 走るくらい? 家から50mって、どこまで?
そんな話をしてみてください。
算数の数字が、実際の世界の長さや時間につながった瞬間、理解はかなり変わります。

単位が最初から書いてあっても、あえて聞いてみる
小学校の問題では、答えのところに単位があらかじめ示されていることもあります。
問題を解きやすくする点では便利です。
ただ、家庭ではときどき、「もし単位が書いてなかったら、何をつける?」と聞いてみてください。
km? 時間? 毎時○km?
単位を自分で考えると、「今、自分は何を求めたのか」を確認することになります。
これはテスト対策というより、算数を本当に理解するための練習です。
以前、「かける?わる?」が口ぐせだった子がいました
以前、速さの問題になるたびに「これ、かける?」「わる?」と聞いてくる子がいました。
公式は知っています。でも、問題の形が少し変わると止まります。
そこで、いったん公式を使うのをやめて、毎回「時間」と「道のり」の対応表を書くことにしました。
最初は「また表書くの?」という感じでした。ところが何問か続けたあと、こちらが何も言っていないのに、自分から表を書き始めたんです。
そして、「時間が3分の1になるから、道のりも3分の1だ」と自分で言いました。
これは大きな変化です。正解したからではありません。
それまで「何算?」を探していた子が、「何と何が、どう変わる?」を見るようになったからです。
この考え方は、速さだけで終わりません。割合、比、比例、反比例、そして中学校の関数へつながっていきます。
まとめ|今日から家庭でやる3つだけ
1.「かける?わる?」に答えない
代わりに、「時間はどう変わった?」と聞きます。そして、「じゃあ、道のりは?」と続ける。
答えではなく、考える順番を渡します。
2.10cm・1m・1分を実際に確かめる
算数の単位を、教科書の中だけに置いておかない。
測る。歩く。待ってみる。
数字と生活をつなげます。
3.「正解!」のあとに、もう一言
「表にしたから分かったね」
「1時間あたりって考えられたね」
「単位まで見られたね」
と、答えではなく考え方をほめてください。
その積み重ねで、「この問題ができた」から、「分からなくても、自分で考えられる」に変わっていきます。

速さで本当に身につけたいのは、公式ではありません。時間と道のりの関係を見る力です。
今日、お子さんに一つだけ聞くなら、「50kmと毎時50km、何が違う?」
ここから始めてみてください。
「何と何が対応しているの?」
「どうしてそう考えたの?」
この3つで十分です。
全部教えなくて大丈夫です。
答えを教えることより、
考えるきっかけを作ること
の方が、長い目で見るとずっと大切です。

