このブログシリーズでは、小学生がつまずきやすい算数の単元をテーマに、ご家庭でも実践できる教え方のヒントや、考える力が育つ声かけの工夫を紹介しています。
どれもマックスの算数教室で実際に使っている考え方・説明の仕方ばかりですので、「家で教えるときにどうすればいいの?」という保護者の方にも安心して活用いただけます。
「計算のルールを覚える」だけでなく、「意味を理解して、使える力にしていく」ことが、この時期の算数ではとても大切です。
お子さんの「できた!」「わかった!」を引き出すヒントがきっと見つかります。
分数の計算は、最初に『約分』がコツ!
~ミスが減って、自信がつくおすすめの方法~
分数のかけ算・わり算に入ると、「なんだか難しそう…」と思ってしまうお子さんも少なくありません。
けれど、ちょっとしたコツを知っているだけで、ぐんと楽になって、ミスも減って、自信もついてくるんです!
今回はその中でも特におすすめしたい、「最初に約分する」という方法をご紹介します。
◆ まずは、いつもどおりにかけてみると…
たとえば、こんな問題があるとします。
こうやって計算します。
もちろん、これで正解です。
ただ、数字が大きくなってからの約分って、意外と手間なんですよね。
◆ 実は「最初に約分」した方がずっとラク!
「最初に約分する」するともっと簡単に解けます。
✅ 4と8は、両方とも“4の段”に出てくる数
→ 約分できます!
かけ算して数字が大きくなってから約分するより、かけ算する前の小さな数字のときに約分した方が、早くて正確。
数字が小さいうちに約分しておくと、計算がグッと楽に、しかも正確になります!
◆ 分数のかけ算の基本ルール
- ① 分子×分子、分母×分母でかける
- ② できるところで先に約分するのがおすすめ!
- ③ 整数は分母が1の分数とみなす(例:3 = 3/1)
- ④ 帯分数(例:1と1/2)は仮分数(例:3/2)に直してから
- ⑤ 分数が3個以上でも、同じルールで順にかける
◆ 分数のわり算は「ひっくり返してかける」
分数のわり算では、「わる数の逆数(分子と分母を入れかえたもの)」をかけるというルールを使います。
たとえば:
\( 2 \div \frac{1}{4} \)
これは、「2の中に\( \frac{1}{4} \)が何個あるか?」という意味です。
1の中に1/4が4つあるので、2の中には1/4が8個あるので、
\( 2 \div \frac{1}{4} = 8 \)です。
つまり \( 2 \div \frac{1}{4} と 2 \times \frac{4}{1} = 8 \) は同じ答えになります。
このように、「÷分数」はひっくり返してかけ算(逆数をかけ算)すると答えが出せるんです。
◆ 分数のわり算のルール
- ① わる数の逆数をかける(÷を×に、分子と分母を逆)
- ② 約分は計算の途中でどんどんやる!
- ③ 整数は1を分母にして分数にする
- ④ 帯分数は仮分数にする
◆ いろいろな計算パターンにも慣れていこう
- ・かけ算とわり算が混ざっていても、まずはわり算を逆数にしてからスタート!
- ・小数が出てきたら、分数に直すと計算しやすくなることも
- ・整数は 1/1 や 5/1 として扱える
実は、自分から分数にしてしまった方が楽なこともあります。
「分数って、便利な数なんだ!」という感覚を、ぜひ育てていきましょう。
◆ 練習してみよう! 分数の計算
【問題①】分母と分子を見て約分しよう!
計算:\( \frac{6}{9} \times \frac{3}{4} \)
✅ ステップ:
- まず、約分できるところがないかをよく見ます。
- 6と4 → 2で約分 → 3と2
- 3と9 → 3で約分 → 1と3
- 約分後の式 → \( \frac{3}{3} \times \frac{1}{2} \)
- さらに、3と3 → 約分して 1と1
- 約分後の式 → \( \frac{1}{1} \times \frac{1}{2} \)
- 計算結果 → \( \frac{1}{2} \)
まとめ:
\( \frac{6}{9} \times \frac{3}{4} = \frac{6 \times 3}{9 \times 4} = \frac{3 \times 1}{3 \times 2} = \frac{1}{2} \)
答え: \( \frac{1}{2} \)
【問題②】分数のわり算は「逆数をかける」!
計算:\( \frac{5}{6} \div \frac{2}{9} \)
✅ ステップ:
- わり算は、逆数をかけ算に変えます:
- \( \frac{5}{6} \div \frac{2}{9} = \frac{5}{6} \times \frac{9}{2} \)
- 次に、かけ算の前に約分をします:
- 9と6 → 3で約分 → 3と2
- 約分後の式 → \( \frac{5}{2} \times \frac{3}{2} \)
- かけ算します → \( \frac{5 \times 3}{2 \times 2} = \frac{15}{4} \)
まとめ:
\( \frac{5}{6} \div \frac{2}{9} = \frac{5}{6} \times \frac{9}{2} = \frac{5 \times 3}{2 \times 2} = \frac{15}{4} \)
答え: \( \frac{15}{4} \)
【問題③】整数は、分母が1の分数にする
計算:\( 4 \times \frac{3}{7} \)
✅ ステップ:
- 整数4は、分母が1の分数として考えます → \( \frac{4}{1} \)
- 式を分数のかけ算の形にします → \( \frac{4}{1} \times \frac{3}{7} \)
- 分母どうし・分子どうしをかけます → \( \frac{4 \times 3}{1 \times 7} = \frac{12}{7} \)
答え: \( \frac{12}{7} \)
【問題④】帯分数は仮分数にかえる
計算:\( \frac{7}{8} \div 1\frac{5}{16} \)
✅ ステップ:
- 帯分数 \( 1\frac{5}{16} \) を仮分数に直します → \( \frac{21}{16} \)
- わり算は「逆数をかける」に直します → \( \frac{7}{8} \div \frac{21}{16} = \frac{7}{8} \times \frac{16}{21} \)
- 約分します:
- 7と21 → 1と3
- 16と8 → 2と1
- 約分後の式 → \( \frac{1}{1} \times \frac{2}{3} \)
- 計算結果 → \( \frac{2}{3} \)
まとめ:
\( \frac{7}{8} \div 1\frac{5}{16} = \frac{7}{8} \div \frac{21}{16} = \frac{7 \times 16}{8 \times 21} = \frac{1 \times 2}{1 \times 3} = \frac{2}{3} \)
答え: \( \frac{2}{3} \)
【問題⑤】分数が3つあるとき
計算:\( \frac{3}{4} \times \frac{2}{7} \times \frac{7}{12} \)
✅ ステップ:
- 分数が3つあっても、左から順にかけていきます。
- まず約分します:
- 7と7 → 約分して 1と1
- 3と12 → 約分して 1と4
- 2と4(分母)→ 約分して 1と2
- 約分後の式:\( \frac{1}{4} \times \frac{1}{1} \times \frac{1}{2} \)
- 順にかけ算 → \( \frac{1 \times 1 \times 1}{4 \times 1 \times 2} = \frac{1}{8} \)
まとめ:
\( \frac{3}{4} \times \frac{2}{7} \times \frac{7}{12} = \frac{3 \times 2 \times 7}{4 \times 7 \times 12} = \frac{1}{8} \)
答え: \( \frac{1}{8} \)
【問題⑥】わり算とかけ算がまじるとき
計算:\( \frac{1}{9} \div \frac{5}{8} \times \frac{3}{4} \)
✅ ステップ:
- わり算は逆数をかける形に変えます:
- \( \frac{1}{9} \div \frac{5}{8} = \frac{1}{9} \times \frac{8}{5} \)
- それを使って式全体を整理すると:
- \( \frac{1}{9} \times \frac{8}{5} \times \frac{3}{4} \)
- 次に、かける前に約分をします:
- 8と4 → 約分して 2と1
- 3と9 → 約分して 1と3
- 約分後の式 → \( \frac{1}{3} \times \frac{2}{5} \times \frac{1}{1} \)
- 順にかけ算 → \( \frac{1 \times 2 \times 1}{3 \times 5 \times 1} = \frac{2}{15} \)
まとめ:
\( \frac{1}{9} \div \frac{5}{8} \times \frac{3}{4} = \frac{1}{9} \times \frac{8}{5} \times \frac{3}{4} = \frac{1 \times 8 \times 3}{9 \times 5 \times 4} = \frac{2}{15} \)
答え: \( \frac{2}{15} \)
【問題⑦】小数は分数に変える
計算:\( 0.15 \times \frac{5}{9} \)
✅ ステップ:
- まず、小数を分数に直します:
- \( 0.15 = \frac{15}{100} \)
- 15と100を5で約分 → \( \frac{3}{20} \)
- 次に、かけ算の式にします → \( \frac{3}{20} \times \frac{5}{9} \)
- 掛け算の前に約分をします:
- 5と20 → 約分して 1と4
- 3と9 → 約分して 1と3
- 約分後の式 → \( \frac{1}{4} \times \frac{1}{3} \)
- かけ算すると → \( \frac{1}{12} \)
まとめ:
\( 0.15 \times \frac{5}{9} = \frac{3}{20} \times \frac{5}{9} = \frac{3 \times 5}{20 \times 9} = \frac{1}{12} \)
答え: \( \frac{1}{12} \)
【問題⑧】整数も分数にしてから計算すると楽!
計算:\( 14 \div 16 \times 18 \div 21 \)
✅ ステップ:
- 整数もすべて「分母が1の分数」として書き直します:
- \( 14 = \frac{14}{1},\ 16 = \frac{16}{1},\ 18 = \frac{18}{1},\ 21 = \frac{21}{1} \)
- わり算は「逆数をかける」に直します:
- まとめて式にすると → \( \frac{14}{1} \times \frac{1}{16} \times \frac{18}{1} \times \frac{1}{21} \)
- 次に、かけ算の前に約分します:
- 14と21 → 7で約分 → 2と3
- 18と16 → 2で約分 → 9と8
- 約分後の式 → \( \frac{2}{1} \times \frac{1}{8} \times \frac{9}{1} \times \frac{1}{3} \)
- 順にかけ算 → \( \frac{2 \times 1 \times 9 \times 1}{1 \times 8 \times 1 \times 3} = \frac{18}{24} \)
- 最後に6で約分 → \( \frac{3}{4} \)
まとめ:
\( 14 \div 16 \times 18 \div 21 = \frac{14}{1} \div \frac{16}{1} \times \frac{18}{1} \div \frac{21}{1} = \frac{14 \times 1 \times 18 \times 1}{1 \times 16 \times 1 \times 21} = \frac{2 \times 9}{8 \times 3} = \frac{3}{4} \)
答え: \( \frac{3}{4} \)
【問題⑨】たし算とかけ算がまじるとき
計算:\( \frac{3}{7} + \frac{3}{10} \times \frac{5}{9} \)
✅ ステップ:
- まず、順番に注意します。たし算よりも、掛け算を先に計算します。
- たし算の前の \( \frac{3}{7} \) は、手をつけずにそのまま書き写しておきます。
- 掛け算の部分:\( \frac{3}{10} \times \frac{5}{9} \)
- 掛ける前に約分します:
- 3と9 → 約分して 1と3
- 5と10 → 約分して 1と2
- 約分後の掛け算 → \( \frac{1}{2} \times \frac{1}{3} = \frac{1}{6} \)
- 元の式はこうなります → \( \frac{3}{7} + \frac{1}{6} \)
- 通分して計算:
- 公倍数は42
- \( \frac{3}{7} = \frac{18}{42} \), \( \frac{1}{6} = \frac{7}{42} \)
- \( \frac{18}{42} + \frac{7}{42} = \frac{25}{42} \)
まとめ:
\( \frac{3}{7} + \frac{3}{10} \times \frac{5}{9} = \frac{3}{7} + \frac{3 \times 5}{10 \times 9} = \frac{3}{7} + \frac{1}{6} = \frac{18}{42} + \frac{7}{42} = \frac{25}{42} \)
答え: \( \frac{25}{42} \)
◆ ご家庭での声かけのヒント
お子さんが分数の計算に取り組んでいるとき、こんなふうに声をかけてみてください。
- 「これ、かける前に約分できるところあるかな?」
- 「約分してからやると、ちょっとスッキリするかも!」
大人にとっては当たり前でも、子どもにとっては“知っていると得する裏ワザ”のような感覚。
楽しみながら身につけていけるといいですね。
まとめ
分数の計算で「最初に約分する」ことを覚えると、
計算がぐっと簡単になって、正確さもアップ!
小さな工夫ですが、この積み重ねが、
「計算って楽しい!」「分数ってわかる!」という気持ちを育ててくれます。
ぜひご家庭でも、お子さんの計算の様子をちょっと見守って、
「今、いい工夫したね!」なんて声をかけてあげてくださいね。